新着情報
RSS2.0
2021/12/11
2021冬
特集テーマ:不登校について考えてみる 〜子どもが幸せに過ごせる学校・学び育ちの場へ〜 《目次》 1. 不登校を「私」の専門から考えてみよう(石田佳織) 2.《特集》  不登校問題についての一考察(穂積妙子)  不登校を考えてみる〜第3の現場から〜(新田新一郎) 3.《世界のこども環境》   柔軟なしくみで子どもたちを支援する(渡邊あや) 4.《バトンをつなぐ》  こどもも大人も育つ学校をつくる(井内聖) 5.《こどもの手と眼》   やじるしできたよ→(Hくん:8歳) 6.《この一枚!》  わあ。あった! hiro (仙台市・女) 7.《ブック&シネマ》  末富芳・櫻井啓太著「子育て罰「親子に冷たい日本」を変えるには」(仙田満)   岡本央著「ないないづくしの里山学校」(藤田大輔)  きみ きみよ著, みやかわ さとこ (イラスト)「にゃんたとおつきさま」(小澤紀美子)  大豆生田啓友・大豆生田千夏著「非認知能力を育てる あそびのレシピ」「非認知能力を育てる「しつけない」しつけのレシピ」(神谷明宏) 8.《編集室から》  
2021年冬号企画担当 園庭研究所 石田佳織    不登校児童生徒数が年々増加する中、こども環境学会誌では「不登校」を取り上げたことがないと聞き、2021年冬号でテーマとすることになりました。 不登校への取組や視点は様々ありますが、子どもの環境を考えるこの学会だからこそ出来ることがあるように思います。例えば、学校に行きづらい子どもにとっての学校や学校外の居場所での物的・空間的環境に関する研究は非常に少ないです。また、子どもに関わる人的〜物的空間的〜社会的環境、そして子ども〜家庭〜学校〜行政〜地域住民といった様々な分野・立場が共に考え取り組んでいくことで、学校に行き辛い子どもたちや家族の辛さは緩和されていくように思います。 本号が、全ての子どもが幸せに暮らし、豊かに学び育っていける環境を考える機会となれば幸いです。   2021年度こども環境学会 学会誌編集委員会・編集部会(2021.12.20現在)▼部会長(Webマガジン編集長)藤田大輔(福井工業大学) ▼部会員●愛甲哲也(北海道大学)●石田佳織(園庭研究所)●松村弘美(プランニング開)○伊藤祐基(大久保わかくさ子ども園)○田村光子(植草学園短期大学)○原...
自分を発見できる豊かな時期として過ごせる環境・仕組みづくりを |不登校|発達障害|多様性|親の会|   つくば子どもと教育相談センター 代表 穂積妙子 はじめに 不登校問題を考える上で、我が国での不登校問題の歴史を知ることは大切です。1950年代から医学界では不登校(当時は学校恐怖症と呼ばれた)に関する論文があります。ここでは不登校の歴史と不登校への行政や学校の対応を述べ、また現在不登校児を持つ家庭の保護者が抱えている困難や悩みなどに言及したいと考えます。                                   写真1 靴下人形(小学校高学年女児が作成)   1. 不登校の歴史と、行政・学校の対応 はじめに、でも述べましたが不登校に関する論文は1950年代に精神分析理論を採用していた医師たちによって書かれています。ここでは不登校という言葉ではなく「学校恐怖症」と呼ばれ、精神疾患という扱いです。原因は家庭環境―母子密着や過保護と父親の無関心、とされていました。治療は母子分離をするための子どもの入院治療が推奨さ...
子どもがイキイキ生きる居場所とは |子どもの居場所|創造表現活動|子どもが育つまちづくり| アトリエ自遊楽校 新田新一郎 仙台のアトリエ自遊楽校は、週に1回(月4回)子どもたちが「自分をつくる」創造表現活動空間です。2歳からかかわると小学6年生まで10年間、卒業後大学生になってボランティアとしてかかわったり、その後、親になって自分の子どもを連れてきてくれたり、子育て相談の場にもなっているなど、「新しい地域コミュニティ」になりつつあるこの場所から不登校を考えてみました。 私は宮城県仙台市でいわゆる「第3の居場所」といわれる「アトリエ自遊楽校」(2歳〜小学6年生まで310名が在籍)という創造表現活動の場を開設しています。昨年まで宮城県が不登校者数4年連続最多であり、仙台市は3項目(不登校・いじめ・暴力行為)で20政令都市の中でワースト3に入っていることもあり、アトリエの中にも学校で苦戦している子どもがたくさんいます。アトリエでは「遊び」と「美術」が合体した「あそびじゅつ」というコンセプトで創作し表現する活動を行なっています。「図工」は教科書がありますが、「美術」の答えは一人ひとりの中にあると考えていま...
子どもたちが誰ひとり取り残されない教育をめざして |社会的疎外|義務教育|JOPO| 渡邊あや(津田塾大学)  フィンランドの学校というと、とかく理想的なイメージで語られることが多い。実際、現地の学校を訪れ、のびのびとした子どもたちの姿や、いきいきと働く先生方の姿に触れると、「こんな学校で学んでみたい!」、「こんな学校で働いてみたい!」と思うことも多い。  とはいえ、生きづらさを抱えたり、学校で疎外感を感じたりしている子どもたちは、フィンランドにも存在する。2012年にEVA(フィンランド・ビジネス政策フォーラム)が発表した報告書は、フィンランド社会に衝撃を与えた1)。ここで指摘されたのは、9年間の基礎学校(日本では、小学校と中学校に相当)における学習の後、統計上から足取りが消えた若者の存在である。教育にも、労働にも、職業訓練にも参加しておらず、失業手当も貰っていない、社会の外で生きる若者が32,500人に及ぶこと、義務教育(当時)を修了したのみで職のない若者を含めると、その数は51,000人に達することが報告された。この数字は、若者人口(15~29歳)の5%に相当する。    こうした状況に対する危機感...