ブック&シネマレビュー

書評『ないないづくしの里山学校』 

日本各地を旅してきた写真家である著者が、千葉県木更津市にある里山学校の日常を紹介した書籍である。里山学校は、古民家を中心とした約一万坪の里山が舞台で、保育園年長組が年間50日ほどを過ごす里山保育と、小学生が思い思いに過ごす土曜学校の両者からなる。活動は全てが魅力的で、泥んこ遊びのほか、焚火、小刀を使ったものづくり、車や自転車などの分解、生き物とのふれあい、昼ご飯のためのおかず収集・料理など多岐に渡る。少しでも服が汚れるとクレームを言う保護者もいる今日、泥だらけで健やかに笑う子どもたちの写真は心がホッとする。また、何かと他者の目を気にすることが多く、学校でも集団活動に重きが置かれている現在、子どもが「一人でいる」ことが担保されている貴重な場であることが描かれている。この書籍の中で宮崎園長は、大人が先回りして危険を排除している状況や多くのものが簡単に手に入ることを危惧し、子どもたちの要求がすぐには満たされないように工夫する必要性を力説している。特に保育・教育関係者や子育てをしている方々は、時たまページを開いて写真や文章を感じるだけでも、「子どもに対してどのように接するべきか」改めて考えるきっかけとなるだろう。
(福井工業大学 藤田大輔)

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タイトル:ないないづくしの里山学校
著者:岡本央
価格:1,400円(税別)
出版社:家の光協会
ISBN:978-4259547707
発行年:2019年8月21日
サイズ(書籍の大きさ):A5/127p
リンクURL:http://www.ienohikari.net/book/9784259547707