不登校を考える〜第3の居場所の現場から〜

子どもがイキイキ生きる居場所とは

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アトリエ自遊楽校 新田新一郎


仙台のアトリエ自遊楽校は、週に1回(月4回)子どもたちが「自分をつくる」創造表現活動空間です。2歳からかかわると小学6年生まで10年間、卒業後大学生になってボランティアとしてかかわったり、その後、親になって自分の子どもを連れてきてくれたり、子育て相談の場にもなっているなど、「新しい地域コミュニティ」になりつつあるこの場所から不登校を考えてみました。

私は宮城県仙台市でいわゆる「第3の居場所」といわれる「アトリエ自遊楽校」(2歳〜小学6年生まで310名が在籍)という創造表現活動の場を開設しています。昨年まで宮城県が不登校者数4年連続最多であり、仙台市は3項目(不登校・いじめ・暴力行為)で20政令都市の中でワースト3に入っていることもあり、アトリエの中にも学校で苦戦している子どもがたくさんいます。
アトリエでは「遊び」と「美術」が合体した「あそびじゅつ」というコンセプトで創作し表現する活動を行なっています。「図工」は教科書がありますが、「美術」の答えは一人ひとりの中にあると考えています。「美術する」とは、他の人の真似をしないということ。そして自分の内面を見つめ、たった1人の「自分をつくる」こと。そのことが、不登校で苦しんでいる子ども達の救いになっていると考えます。また創作活動は、失敗の連続だったりします。困難に立ち向かう力、ここに不登校問題の解決策とは言いませんが、ヒントがあるような気がしてなりません。
ナナメの関係である私たちスタッフは「〇〇先生」と呼ばれず、「ニックネーム」で呼ばれます。アトリエでは「先生」という存在はいないのです。学校(スクール)の語源は「スコレ」。「余暇」とか「楽しみ」という意味です。そう、アトリエは「楽校」、不登校とされる子どもたちが、イキイキと活動しています。アトリエは不登校児のためのフリースクール的な存在ではないのですが、昨年12月から「アトリエ登校」する子どもが1人出てきました。


A君(5年生)は、朝来るなりうちのスタッフにお茶を入れてくれたり、アトリエの幼児クラスのお手伝いをしたりの日々を過ごすのですが、そこでうちのスタッフから「ありがとう」、「たすかったよ」、「すごいねえ」の言葉をたくさんかけられることになりました。読書の時間もたくさん取りました。半年で20冊も読み終えた今年の7月、突然国語のテスト100点をとって褒められ、そのことで自信がつき、それ以来学校に通い出したという経過をたどりました。もちろん不登校の最終的な解決策は学校に通い始めることではありませんが、彼が自分から進んで学校に向かうきっかけになったことは明らかです。不登校問題は学校の教員だけでは解決が難しく、私たちのような第3の居場所との連携を図ることが大変重要になると考えます。

 

 

 

新田新一郎 (にった しんいちろう)

アトリエ自遊楽校主宰・プランニング開代表取締役、こども環境学会代議員、東北学院大学非常勤講師。教育・子ども文化・まちづくりなどをテーマに 「地域の感動をプロデュース」している。仙台子どもセンターの基本構想、子どもミュージカルの プロデュースなど「子どもが育つまちづくり」、 「子どもの参画」を柱としたまちづくり事業を展開している。

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