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書評『世界のESDと乳幼児期からの参画 ーファシリテーターとしての保育者の役割を探る』
本書は世界8か国における乳幼児期の「持続可能な開発のための教育(ESD=Education for Sustainable Development)」の実践を概観し、その課題と展望を示したものである。「持続可能な開発(SD=Sustainable Development)」という概念は、国連において1990年代初頭より提唱されてきたもので、昨今、保育界でも非常によく耳にする「SDGs」の「SD」だといえば分かりやすいだろうか。自然環境や格差・貧困問題等まで含む、地球規模の経済的・社会的な共通課題をいかに解決していくか、そのための次世代の育成をテーマとすると、乳幼児期からの取り組みについての重要性は論をまたないだろう。
さて本書において通底する問題意識は、乳幼児期においてESDを取り入れようとしたときに、ややもすると「自然体験教育」のようなイベント的なものに終始してしまいがちということである。
本書によるとESDを乳幼児期に取り入れる活動のうち、その実践スタイルとして「参加型」と「参画型」に大別できるという。「参加型」というのは、保育・教育者主導で、体験教育型のもの。保育現場ではひとつの設定保育として実施するようなイメージが重なる。「参画型」は、あくまで子ども(学習者)主導・主体で、問題発見・問題提起型の学びである。ESDの実践の中では、世界的にも、「参加型」のものから「参画型」の学びへとシフトチェンジが進行している最中であるとわかる。そこでの保育者の役割は、先導者・教育する者というよりも、ファシリテーターという立場が求められる。この点は現行の「保育所保育指針」にある「主体的、対話的で深い学び」という視点とも重なる話であろう。
SDGsを取り入れた教育・保育というものが盛んにいわれている中であるが、その先駆けとして各国で根付いてきたESDを、本書を通じて掘り下げて振り返ることも有用なのではないか。
(大久保わかくさ子ども園 伊藤祐基)
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タイトル 世界のESDと乳幼児期からの参画 ファシリテーターとしての保育者の役割を探る
著者 萩原 元昭 編著
価格 3,400円(税別)
出版社 北大路書房
ISBN 9784762831270
発行年 2020年11月20日
サイズ(書籍の大きさ) A5判208ページ