カテゴリ:2021冬

子どもも大人も育つ学校をつくる

学校での偶発的な大人との出会いが生み出す経験と学び

 

|子ども|学校|地域|場づくり|

(学)リズム学園 井内 聖

平成30年北海道胆振東部地震

はじめまして、(学)リズム学園はやきた子ども園学園長の井内です。はやきた子ども園は新千歳空港から車で20分、人口約 7,500人の安平町にある学校法人立としては全国初の公私連携の私立こども園です。

北海道 安平町は平成30年に発生した北海道胆振東部地震(最大震度7)の被災地で、地震があったその日(深夜3時7分 )はちょうどお泊まり会の最中でした。幸い、園児にケガはなく無事に朝を迎えたものの北海道全域がブラックアウトし、しばらく大変な状況が続きました。

町全体にも大きな被害があったものの、震災を機に住民の手でもう一度まちをつくろうという機運が高まり、(1)子どもの遊び場づくり、(2)スポーツ環境、(3)多世代交流スペースを運営するNPO法人や一般社団法人が複数、設立されました。そのどれもが子どもに関わるものでした。

 

子どもにやさしいまち

これらの動きは市民活動レベルだけでなく安平町としても地域おこし協力隊を活用したプレーパークや遊び場づくりであったり、知識習得を目的としない探究的な学習を中心とした公営塾をつくったりなどの取り組みを進めてきました。幼児期からの遊びが学びにつながり、学びが挑戦につながることをうたった「あびら教育プラン」は自治体が取り組む新しい学びのスタイルだと思います。これらの背景には安平町がユニセフの「子どもにやさしいまち」の検証事業に参加していることも関係しています。

 

※動画1 あびら教育プラン
https://www.youtube.com/watch?v=32uW2uDH0Nw


みんなの学校づくり

これらの動きの集大成ともいえるのが被災で使えなくなった早来中学校の再建事業です。震災から3年が経つ今も生徒達は仮設校舎での生活を余儀なくされています。

新しい学校は、住民との議論で作られた基本コンセプトをもとに従来の公立学校の概念を大きく変える学校空間として設計され、そこでは「人」も子ども環境の一つとして捉えられています。
従来、学校施設における環境とは空間、音、光、動線などでしたが、今回の学校は人との出会いも環境と位置づけ、教師と生徒以外の大人が自由に学校に出入りし、偶発的な出会いから子どもの経験や学びが広がることをしかけています。またビオトープや自然庭園なども計画され、そのデザインは住民や子どもが参画して専門家のサポートを受けながらプランニングを進めています。
このように従来とは違う学校となったのは、設計の前に「学校とは何か」「学校とはどんな場か」という本質的議論を行政主導ではなく地域や保護者、さらに子どもたちも参画し、みんなでコンセプトを考えていったからです。

はやきた子ども園の目の前に建設される、地域や自然と一体になった学校。幼児から高齢者までが使える、子どもも大人も育つ学校。

子ども環境を徹底的に考えることがまちづくりになるのか。小さなまちの大きな挑戦です。

※HP1 早来地区義務教育学校特設ページ
https://www.town.abira.lg.jp/kosodate/asobimanabi/gakko

 

井内 聖(いうち せい)
学校法人リズム学園学園長、恵庭幼稚園長。大学卒業後、中学校教員を経て幼児教育へ転身。北海道胆振東部地震では、こどもの居場所として被災2日後に園を開放し、応急保育を行う。震災翌年には安平町に出向し総合 教育専門員として早来中学校の再建計画に携わる。