特集記事

アートと創造性があふれるこどもの日常

子どもの生きる力を育てる大人の関わり方

|創造性|生きる力|チルドレンズミュージアム|

 

篠山チルドレンズミュージアム 館長 垣内敬造

  高学年になるにつれ、アート(芸術)が苦手という子が多くなるようです※1。原因のひとつに、生活にどう役立つのか分からないということがあるのかもしれません。アートは創造的な行為だとも思われています。では、創造性ってなんでしょうか?日常生活や子どもたちの成長にどのように役立つのでしょうか?

 兵庫県丹波篠山市にある篠山チルドレンズミュージアム(ちるみゅー)は、里山に囲まれた元中学校の木造校舎を利活用して2001年の夏休みにオープンした、子どもと子どもの心を持つ大人のためのミュージアムです。旧校舎にはハンズオンで子ども文化を紹介する展示室や、教室全体が木のおもちゃになった部屋などがあります。増築したワークショップ棟では、木工や自然を楽しむワークショップや、地域の食材をかまどで調理するワークショップなどの体験プログラムがあり、「子どもたちの創造性と生きる力を育む」ことを目標に、ちょうど20年前に作られました。

 1996年文部省(現文部科学省)の諮問に対する中教審答申※2の中に「生きる力」への言及があり、これを受けて2002年以降実施の学習指導要領で「総合的な学習の時間」が創設されました。「ああ、あの頃か」と思われる教育関係者も多いことでしょう。これからの社会を生きる子どもたちには、「自ら課題を見つけ、学び、考え、主体的に判断し、行動し、課題を解決する能力および、協調し思いやる心や感動する心などの豊かな人間性が必要」とされ、これを「生きる力」と呼びました。コンセプトはその影響を受けていますが、ちるみゅーは市の教育委員会ではなく首長部局(当時の政策部)が開設し、現在も企画総務部・創造都市課が所轄していて、教育だけでなく地域活性化というミッションも背負っています。

 ぼくは設立当初からボランティアとして関わりはじめ、2013年度から館長として運営に携わっている民間人です(2008年度から指定管理者制度を導入)。ちるみゅーは、上記のように地域のための博物館という成り立ちから、設立以来多くの市民ボランティアに支えられてきました。創造性と生きる力を持つ子を育むことは、地域の願いでもあると思っています。

 校庭だった場所には芝生が植えられ、わざと凸凹をつけたり小高い丘も作られています。ちるみゅーの芝生広場には、ブランコや滑り台といった“よくある遊具”は置いてないので、来館者から置いて欲しいと請われることもあります。でも大人の方々にはもう少し我慢して、子どもたちの遊び方を見てほしいと思っています。

 ある日、ちるみゅーで子どもたちが、「ブランコはないの?」といい出しました。「なければ作ればいいじゃん」ということで、子どもたちが木の枝にロープを吊って自作することになりました。このとき大人のファシリテーターたちは、子どもたちの発想に寄り添ってロープを準備したり、背が届かなければ手伝ったり、危険がないよう見守るだけでした。
 だんだんブランコの完成が近づくと、ある子は「宣伝しないとみんな遊んでくれないのでは?」といって宣伝ポスターを描き始めました。また、ある子は「たくさん集まり過ぎたら、順番に並ばせる役がいるから私がやる」とか、「私は後ろから押してあげる役」など自分から言い出しました。子どもたちだけでどんどん役割分担を決めていったのです。そこで子どもたちが作ったのは、ただの“ブランコ”ではなく“ブランコ遊び”という社会性のある遊び方の創造だと気付きました。

 この創造力こそ子どもたちに身に付けてほしい力だし、次回からも遊びを創り出してほしいと思ったので、子どもたちが帰ったあと手作りブランコは片付けました。滑り台の場合も丘にブルーシートを敷いて作ったりしますが、終わったら片付けます。

 ムッシュ香月さんは、子どもがやろうとする前に大人が指導しすぎると指摘されています。ちるみゅーでのムッシュ香月さんのアートワークショップは、とにかく子どもの自発性を大切にし、ある種のハプニングを期待するものでした。非日常的なハプニングが起こると、子どもたちは“ゾーン”に入りどんどん集中力が高まるのを感じます。

 ベルリン在住で遊具デザイナーでもある桂川茜さんは、遊具をデザインするとき子どもの参画をとても重要視されています。子どもの参画による発想の転換は大人にとっても驚きである一方、子どもたちの自己肯定感が強まり、生き方に変革が起こっていると思います。遊具を設計するところから教育が始まっているところにドイツの文化度の高さを感じます。

 創造性を、革新的で今まで見たことのないオリジナリティのあるもの、というように構えて捉えると、凡人には生み出せない作品のような“すごい”もの(こと)を思い浮かべます。でも、ちょっと待ってじっくり日常の遊びを見ていると、子どもの生き方に日々イノベーションが起きていることに気付きます。生き方が変わるなんて“すごい”創造性!子どもたちの日常にはアートと創造性が充満しているんですね。


注:
※1末永幸歩著,『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』, 2020年ダイヤモンド社
※2文部省 審議会答申等 (21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申),1996年)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/960701.htm


 

垣内敬造 (かきうちけいぞう)

大阪芸術大学大学院博士後期過程単位取得退学。1984 年よりグラフィックデザイナーとして活動。篠山チルドレンズミュージアム館長。兵庫教育大学 教員養成・研修高度化センター教授。丹波篠山市教育委員。垣内敬造事務所アートディレクター。

 

大人は透明人間

子どもの世界は沼地だ。一度入るとおもしろ過ぎて抜け出せない。

|やりたい気持ちが原動力|溶解体験|予想外から生まれる世界|

 

四條畷学園短期大学 ムッシュ香月(香月 欣浩)

  私が子どもの世界に入って28年が経過した。いればいるほど居心地がよく、奥深く面白いこの世界に、ますます引き込まれていく。
 そして気が付くと私は我を忘れ、子どもたちと遊んでいる。“自分が溶けていく”そんな感覚だ。子どもたちも私と同じように、色々なことに夢中になり、自分と「もの・ひと・こと」との境目が分からなくなる「溶解体験」を日々送っていると思われる。

 私たち大人も周りが目に入らなくなり、あっという間に時間が経過していく経験がきっとあるはずだ。世界と自分が一体化する瞬間だ。そんな環境や時間を私は子どもたちに「与えている」のではなく、「子どもたちと一緒に楽しんでいる」。

 例えばアトリエの真ん中で水をまき散らしている子どもがいる。

 絵の具のついた筆を天井に向かって振っている子どもがいる。いたずらではない。表情は大まじめで、眼差しは鋭く本気だ。「どうなるんだろう?やってみたい!知りたい!」これが子どもたちの原動力となって、行動に火をつける。子どもは大人の様に後先を考えない。いやそもそも「後先」が分からない、知らないから「やってみたい!」のだ。

 そんな子どもたちと一緒に活動をしているとワクワクする。子どもにとって、生まれて初めての経験、挑戦、発見、驚きの場面に立ち会える。最高なポジションだ。
 私は子どもたちに助言をしない。先回りをせず子どもの後ろから子どもと同じ方向を笑顔で見ている。自分を認めてくれる、応援してくれる大人が側にいる。それだけでいいと考えている。ひょっとすると子どもたちは私のことを「大人」ではなく「仲間」と思っているのかもしれない。そうならば最高にハッピーだ。

 ここに紹介する写真のほとんどは、子どもたちがたくさんの材料(紙、板、プラスティック、土、絵の具など)や道具(スプレー、釘、スポンジ、コーヒードリップなど)の中から自分で選び組み合わせて活動を行なっているものだ。

 天井から吊るしたトイレットペーパーに、スプレーで絵の具を吹き付けていた子がいた。大量に絵の具をかけるので、色水は流れ落ち床にどんどんたまっていく。池になり、湖になり、海となっていった。子どもの興味はトイレットペーパーから、床にたまった色水に移っていく。色水におもちゃを浸して持ち上げる。子どもの表情が一変した。「ムッシュ!見て見て!!」子どもが見せてくれたドーナツ状のおもちゃを見ると、穴の部分に色水の膜が張っていた。そして膜の中で色水の模様が流動しているのだ。それは見たことのない“美”の世界、発見であった。

 もし私が床に大量に溢れた色水を雑巾で拭くように助言していたら、子どもも、私もこの発見、感動を失っていただろう。「発見は想像もしていない○○から生まれる」常識だけで活動を行なっていたら世界が狭くなってしまう。
 これからも子どもたちが見たことのない世界を発見していくために、私は透明人間に徹していこうと考えている。そして子どもと一緒に冒険、挑戦をして「新しい世界」の扉を一生開き続けていく。


 

ムッシュ香月(香月 欣浩)(むっしゅかつき)

2014年NHK Eテレ「いないいないばあっ!」造形指導

小学校美術専科教諭を経て、現在は四條畷学園短期大学保育学科 准教授・キッズアート研究所代表

 

 

子どもの声を聴く社会を築くために

子どもアドボケイトを知っていますか

|子どもアドボカシー|子どもコミッショナー|子どもの権利| 意思表明権|

子どもアドボカシーセンターNAGOYA代表理事
奥田陸子

子ども・若者の声が社会を変える
子どもの言葉や行動にハッとさせられたことのある大人は多いと思う。そう、子どもは大人が忘れてしまったような新鮮なものの見方、発想力の持ち主なのだ。その子どもらしい発想力が引き出せれば、大人も幸せになり、社会は変わるだろう。

コロナウイルスの蔓延に伴い、世界中が大騒動しているが、これを機に、子どもたちも変わってきている。自分の頭で考え、自分の言葉で意見が言える子どもたちは、大人に向かい合って自分たちの考えを言葉にし、それを通して、よりよい未来をつくることをあきらめがちな大人たちに、「そんなことはない」、「社会は変えることができるんだ」というお手本を、あちこちで示し始めている。

東京都板橋区の小学生チーム「ザ・レッドムーン」が「サッカーできる場所がなくて困っています」と区長に陳情した結果、区議会で慎重に協議され、子どもたちの願いが一部採択されたという事例をWEBで読んだ。兵庫県南あわじ市の神代小学校では、市が決めた運動会中止の理由を理解はしながらも、例年通りの運動会はできなくても工夫して自分たち流のやり方で運動会を実施したいと、大人を説得して、やりたいことを成し遂げたという事例も、テレビで見た。これらの事例はほんの氷山の一角に過ぎないことは想像に難くない。NHKのテレビ番組で紹介されたZ世代(ゼット世代)注1)も、どちらかというと並みの子どもからはみ出した子どもや若者がITを駆使して世界中に仲間を増やしていった事例であった。
もう20年も前に私が関わって日本に紹介した『子どもの参画―コミュニティづくりと身近な環境ケアへの参画のための理論と実際』注2)にも、大人といっしょに子どもや若者が社会を変えていった海外の事例が紹介されているが、それらに匹敵するような事例が日本にも広がりつつあることをうれしく思っている。

子どもの意見表明権行使を助ける「子どもアドボカシー」制度
一方で、いじめや虐待、貧困、親の病気などで苦しんでいる子どもたちも少なからずいるが、その子たちは自分の気持ちを声に出せない、意見を表現する言葉も持たないことが多い。そういう子どもたちが、誰かの助けを受けることで自分の気持ちや意見が表現できるようになれば、その子たちが抱えているいじめや虐待その他の問題の解決にどれだけ貢献でき、前向きな明るい社会を実現できるか、想像するだけで気持ちが明るくなる。
日本の政治の世界でも、動きが出始めた。塩崎元厚生労働大臣が声をかけて、「子ども基本法」の試案、立法化に向けて議員たちの勉強会が開かれたと聞く。議員さんたちが子どもの福祉ばかりでなく教育の分野でも現状や子どもたちの実態を知り、対策や制度改革を真剣に考えてくれるようになれば、日本社会も変わることが期待できる。

すでに、福祉分野では、子どもアドボカシー制度が日本でも広がり始めた。「子どもアドボカシー」とは、

1)子どもがその時に言いたいこと(願い)や気持ちを、誰かが大きな声でわかりやすく(マイクになったつもりで)人に伝えること

2)子どもが自分の声で言える時は、それを励まして、できるだけ子ども自身の声で人に伝えるように支援すること

3)子どもの生活や将来に影響が及ぶ大事なことを、大人たちが決めようとしている場で子どもが声をあげられない場合、大人が子どもの代理者(アドボケイト)になってその子どもの意見を人(おとな)に伝える人およびその行為

などを指す。声に出す場合だけでなく書類に書きこむ場合もこれに準ずる。

子どもの権利を守り進めるために
私は、ここで、英国の子どもコミッショナーのこともお伝えしたい。これは、子どもの権利条約を批准した英国の機関であり、国内の子どもの権利の実情を把握し、調査し、それを全国の人に知らせると同時に、子どもの権利実現をさらに進めるための政策提言を行う役割を担う。私はこの英国子どもコミッショナーのことを設立当初からずっと注目してきた。英国では、この「子どもコミッショナー」と「子どもアドボケイト」が車の両輪として機能していることを見てきた。願わくは、日本も子どもの権利を守り進めるために英国のような進め方を取ってほしい。

 

注1 NHKテレビ番組「Zの選択」HPによると、Z世代とは、現在25歳以下(1995年以降生まれ)のジェネレーションのことで、物心つく頃からデジタルもSNSも使いこなす“ソーシャルネイティブ”と呼ばれる世代を指し、新しい価値観を持つと言われている。
注2 ロジャー・ハート著『子どもの参画―コミュニティづくりと身近な環境ケアへの参画のための理論と実際』木下勇・田中治彦・南博文監修、IPA日本支部訳、萌文社、2000年

 



奥田陸子(おくだりくこ)
名古屋市在住。1988年から子どもの遊ぶ権利のための国際協会(IPA)の日本支部の会員として活動してきた。現在子どもアドボカシーセンターNAGOYA」代表理事。

 

子ども参画から子どもアドボカシーへ

一人ひとりの子どもの声を大切に
|子どもの権利|子ども参加|児童館|子どもアドボカシー|

こどもフォーラム代表
原 京子

 

スタートはピンポンハウスから
20年前、奥田陸子さんらが翻訳し日本に紹介したロジャー・ハート著『子どもの参画』1)を読んで衝撃を受けた人は少なくないだろう。私もその一人で、子どもの参画を日本でも実現しようと2001年にNPOを立ち上げた。当時は「子どもの参画ってどういうことなの?」「何をするの?」と問われることも多く、ならばと、子どもの参画を実践する場として古民家を借りピンポンハウスを開設した。集まった子どもたちが中心となり、この場所をどう使うか、何をやるのか、どうやって実現するか、話し合うことからスタートした。
実践する中で気づいたことは、まずは大人が子どもの権利条約にある子どもの権利をよく理解する必要があること。そしてその場が子どもの権利を保障する場になっているかを考えること。つまり、集う場所が一人ひとりの子どもにとって安心して過ごせる場であること、子どもも大人も互いを尊重しあえる関係があること。そういう場があることで、はじめて子どもは自分の思いや考えを自由に表し、その思いを実現する力を発揮していく。大人が情報を提供することで、子どもが地域や社会の問題に関心を持ち、なんらかのアクションが生まれたりもする。大人は子どもの持つ力を信じて待つこと。これは今でも子どもたちと活動する時に大事にしている。

民間での取り組みを児童館へ
ピンポンハウスの実践を民間だけのものにしておくのではなく、公共の施設である児童館でもやってみようと、名古屋市児童館の指定管理者に応募したのは2007年のことであった。運営者となってみて、実に様々な子どもたちが一日100人以上も来訪し、児童館の受容力のすごさに驚いた。同時に、子どもが使う施設なのにイベントなどもすべて職員が決め、子どもの意見がほとんど反映されていないことにも驚いた。そこで、子どもがやりたいことを提案する企画や、大人だけの運営委員会に子どもが参加する機会を増やしていった(写真1)。

写真1 ピンポンハウスで何をやりたいか話し合う様子

子どもの権利を柱に「子ども参加」で運営する「らいつ」

名古屋での実践を踏まえ、運営に「子ども参画」を実現したのが「石巻市子どもセンターらいつ」(以下、「らいつ」)である。これは東日本大震災後、復興における「子ども参加」を目指し、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンがサポートしてきた子どもまちづくりクラブが企画・デザインした児童館である。子どもの権利を柱に子ども参加で運営される(なお、「らいつ」では「子ども参画」ではなく、「子ども参加」という表現を使っている)。
「らいつ」は「子ども参加」の仕組みを3つの段階に分けている(写真2)。

1)子ども企画:一人ひとりが個人として行うもの

2)子ども会議・子どもセンター運営会議:利用者及び利用者代表として「子ども参加」するもの

3)子どもまちづくりクラブ:市民として「子ども参加」するもの

子ども会議、運営会議とも利用運営を考える重要な役割を担っており、市民としての子ども参加に「子どもまちづくりクラブ」が位置付けられている。

震災によりさびれてしまった商店街を活性化しようと子ども視点で商店街マップを作り、ハロウィン祭りを提案したのは「子どもまちづくりクラブ」であった。今では1000人近くが参加する地域の恒例行事となっている。子ども参加や子どもの主体的活動と言えば「らいつ」と、全国の児童館から注目されている。
しかし、なかなか「子ども参加・参画」は広がっていかないのが実情である。その理由に、古い子ども観に囚われる大人の存在がある。「子どもは守ってあげなければ」とか、「子どもにはわからないので大人が決めるものだ」という保護的考え方や、指導的関わり方がまだまだ多い。子どもの主体的活動と言いながら、「参加させる」「やらせる」といった、主体的とは反対の言葉がおかしいとも思われずに使われている。

写真2 子どもたちの声が実現する生態系図(「石巻市子どもセンターらいつ」より)2)

一人ひとりの子どもの声を大切に
2016年、児童福祉法に子どもの権利条約が位置付けられ、第2条には意見表明権が記載された。しかし、児童福祉施設で働いている職員でさえ、「「子どもの権利条約に基づく」とは、何をどうすればよいの?」と戸惑っている感じがする。子どもの権利に対する理解を広げ、子どもの権利に基づいた子ども観をどう伝えるのか。一部の子どもではなくすべての子どもに参加する権利を広げていくにはどうしたらよいのか。そう考えていた時に出会ったのが「子どもアドボカシー」である。
「子どもアドボカシー」とは、子どもが話したいことを自ら話せるように支援したり、必要な場合には、子どもの思いや意見を代わって表明すること。比喩的に言えば、小さな子どもの声を大きくするマイクのような役割で、子どもの権利条約第12条の意見表明権を具現化するものとも言われる。
「子どもアドボカシー」に出会って、「子ども参加」は子ども一人ひとりの声を聴くことであると改めて確認できた。子どもの声に耳を傾けると様々なことが見えてくる。学校のこと、放課後の過ごし方、子どもの遊ぶ環境、社会の問題、政治の問題などなど。子どもの声から社会システムの問題が示唆されると言われるが、まさに今、そのことを実感している。子どもの声から見えてきた社会システムの問題を「子ども参画」で変えていく、そんなことを夢見ている。ぜひ「子どもアドボカシー」に関心を持ってほしい(写真3)。

  

写真3子どもアドボカシーを学ぶ講座

 

「石巻市子どもセンターらいつ」紹介動画もご覧ください。
https://www.facebook.com/1447043615525521/videos/1970074839889060

 

参考文献・参考ホームページ
1) ロジャー・ハート[著]、木下 勇・田中 治彦・南 博文[監修]IPA(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)日本支部[訳]、『子どもの参画』(萌文社2000)
2) 石巻市子どもセンターらいつ、「アニュアルレポート(年間活動報告書)」(2019)
https://ishinomaki-cc.jp/wp/wp-content/uploads/2020/07/%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%882019.pdf
3)堀正嗣[著]、「子どもアドボケイト養成講座 子どもの声を聴き権利を守るために」(明石書店2020)

 



原京子(はらきょうこ)
元石巻市子どもセンターらいつ施設長を経て、現在は、こどもフォーラム代表に就任。一般社団法人子どもアドボカシーセンターNAGOYA理事/事務局長としても活動中。

 

コロナ禍における子どもたちの声

今、頑張っている子どもの気持ち 聴いていますか?

 |相談|電話|悩み|チャット| 

特定非営利活動法人子ども劇場千葉県センター

チャイルドライン千葉 担当理事 中村 幸恵

  

新型コロナ感染拡大の中で、2月末より春休みも含め約3か月間の休校となり、子どもたちの日常生活は一変しました。ステイホーム、ソーシャルディスタンス、テレワーク、オンライン授業等などの言葉や行動様式も生活の一部になってきた感があります。

 チャイルドラインは1 8歳までの子どもが話せる子ども専用電話です。安心して話してもらうために

①ヒミツは守るよ

②名前は言わなくていい

③どんなことも一緒に考える

④切りたいときには電話を切っていい

 という子どもとの4つの約束があります。かけてきた子どもの心に寄り添い、その気持ちを受け止めながら共感的に聴くことを大切にしています。フリーダイヤルでかけられ、2018年からはオンラインチャットも開設しました。現在、全国68団体が連携しあい、約2000名のボランティアが話を聴く活動に参加しています。子どもたちは、いじめや友人関係、部活、勉強、進路、生き方、家族との関係、恋愛、SNS上のことなど普段の生活の中で感じた寂しさ、辛さ、悲しみ、怒り、そして楽しかったことなどをチャイルドラインで話してくれます。

 

チャイルドラインではこのコロナ禍のなかで過ごした全国の子どもの状況を「「新型コロナウイルス感染症」に関連した子どもの声」(事例とデータ速報)(2020年2月28日~4月30日まで)」としてまとめました(末尾参照*1)。一部抜粋して紹介します。事例は個人が特定できないよう編集しています。

 

◎休校要請から全国緊急事態宣言までの主な傾向

Ⅰ 《休校要請 2月28日~ 》

*休みになって将来のことを考えてしまう 

*受験前に休校になって不安になる時間が増えた

*友だちと会えなくなってしまった 

*急に卒業式で実感がわかない 

*アルバイトを休むように学校から言われている

 

Ⅱ 《休校解除方針 3月20日~ 》

*時間がたくさんあるけど何をやっていいのかわからない 

*修了式で久しぶりに学校に行ったけれど、友だちとはあまり話せなかった 

*志村けんが死んでしまった。ショック

*テレビで一日中コロナのことばかりやっている 

*進学したが、うまくやっていけるか不安

 

Ⅲ 《7都道府県緊急事態宣言 4月7日~ 》

*地域に感染者が出た 

*新学期が始まったけど学校がいつ始まるかわからないし、友だちができるか不安 

*自分は休みだけど母が仕事に出かけるので感染しないか不安 

*毎日コロナで人が死んでいて、怖くて外にでられない 

*生活のリズムが崩れてきた。ゲームばっかりしちゃう

 

Ⅳ 《全国緊急事態宣言 4月16日~ 》

*部活で大会を目指して頑張ってきたのに、なくなってしまってすごく落ち込んでいる

*また学校が休みになって外に出られなくなった。友だちができない 

*早く普通の生活に戻ってほしい。いつまでつづくのか 

*友だちと遊べないし、話せない 

*外出できないから考えることが増えた。不安で色々考えてしまう

 

Ⅴ 《その他》

〔家庭が安心ではない状況〕や〔自分自身についての不安、向き合うことによる発見など〕の内容

*親もコロナのことでイライラしてうざい 

*親がコロナのせいで仕事や生活のことを愚痴る

*親が仕事が休みで収入が減ってケンカしている 

*コロナでみんな我慢しているのに自分だけ何もせず、いいのかな? 

*暇だったから今まで見えてなかったものが見えた。お母さんの家事の大変さとか 

*突然の休校で目標を失ってしまった。勉強が手につかない。将来が不安になる

*コロナのことが不安で何もできない。なんで自分は生きているのかと思う

 

 

全体的に学校や部活に関する内容が減少し、自分自身に関する内容が増加したのが特徴です。また、この速報データからは、報道等で注目されている家庭内の虐待や貧困、自殺に関する内容について、特段、大きな変化は見られませんでした。以上、4月30日までの子どもの声と傾向になります。

 

5月後半から、「学校に行きたくない」「入学式に行っただけでクラスメイトと初めて会う」「話しかけられるか心配」「クラス替えになるので友だちができるかな」「オンライン授業では録画して何度も見直せたけど授業になるとついていけるだろうか」等、学校生活への不安を話す子どもが増えました。また、「教室では机が互い違い」「先生はすぐ離れなさいと言い友だちと近づいて話せない」と戸惑いの声もありました。

学校は再開しましたが、子どもたちはまだまだコロナ禍の中にいます。引き続き、その後の子どもの声を伝えていく予定です。発表の場をいただき、ありがとうございました。

 

 

(参照*1)特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター「新型コロナウイルス感染症」に関連した子どもの声」(事例とデータ速報)、(https://childline.or.jp/ プレスリリ―ス:2020年5月26日、一般公表:5月27日)

 

コロナ資料

 


 

中村幸恵

 

中村 幸恵(なかむら ゆきえ)

2020年2月より、チャイルドライン支援センター理事。子ども劇場千葉県センターのチャイルドライン千葉担当理事として日々の運営やボランティア育成、社会発信活動に携わっている。