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《声明》基礎疾患のない幼児にマスクは不要

 新型コロナウイルス感染が始まり、3年が過ぎようとしています。
 元々コロナウイルスは感冒の2割程度の原因となるウイルスでした。
 新型コロナウイルスに変異した結果、世界中の人に感染し、特に高齢者や合併症を持つ患者が多数死亡する結果となりました。一方、こどもは新型コロナウイルスに感染しても、多くは軽症ないし無症状ですみ、高齢者の様に死亡することは稀です。ただし、わが国では感染したこどもの脳や呼吸器などが障害され100名以上が中等症・重症となって入院したり、十名以上のこどもが死亡しています。

 初期の新型コロナウイルスに比べ、現在流行中の新型コロナウイルスは明らかに弱毒化し、患者を死に至らせる危険性は季節性のインフルエンザウイルスと同等ないし、やや強い状態にまで低下していると考えられます。貴重な社会的資源の一つである新型コロナウイルスワクチンはわが国でも高齢者から接種が始まり、現在生後6ヶ月以上にまで接種が可能になっています。しかし、現時点ではこどもの新型コロナウイルスワクチン接種率は成人に比べはるかに低い状況です。なお、新型コロナウイルスワクチンは季節性インフルエンザワクチンと同様に、感染予防より重症化予防を目的に日本小児科学会等の専門団体からこどもへの接種が推奨されています。

 新型コロナウイルス感染の流行初期には、学校や幼稚園などの一斉休校・休園により、こども達は成長・発達に必要なコミュニュケーション、学び、心の交流の機会を失いました。現在、2歳未満のこどもにはマスク着用を推奨しないことや就学児についてマスク着用の必要がない場面を例示するなど、厚生労働省が周知啓発を行っています。しかしながら、その内容が十分に浸透しているとは言えず、未だマスクの着用が励行されている場合があります。マスク着用には感染予防、特に感染患者からのウイルス拡散を予防する効果が認められています。しかし、コロナ禍の下で育つ乳幼児の発達が遅れているとの報告も見られ、成長・発達する幼児にとって、マスクの長期的着用は幼児の心理、社会性の発達を阻害することが危惧されます。顔の多くをマスクで覆うことで、人と人との間の意思伝達が阻害され、心と心の交流を損なう危険性があります。

 健康とは身体的健康だけでなく、心理的健康、社会的健康をも含む概念です。私たちにはこどもの身体・心理・社会的健康を総合的に推進することが求められています。

 以上の状況を踏まえ、こども環境学会は現時点での新型コロナウイルスのこどもへの有害性を正しく認識し、さらに、身体的健康だけでなくこどもの心理・社会的健康への影響を総合的に判断し、基礎疾患を有さない幼児にマスクの着用を推進しないことを提唱します。

2022年11月1日
こども環境学会

 注:幼児とは生後1歳から就学前までのこどもを意味します。